拍手お礼小説2
明日のフットサルは行けなくなった、と直樹、五助、六助の3人から連絡が入った。
このまま中止もなんだしと思い、翼を誘ってみるとすぐにOKの返事。
時間も遅かったのでとりあえず待ち合わせだけ決めて電話を切った。
翼は時間にきっちりしている。
みんなで待ち合わせてるときも大抵時間前に来ている。
それは俺も同じで、いつも時間前には待ち合わせ場所に着くようにしている。
今回は少し早く出すぎたようで翼はまだ来てないけど。
あと5分もすれば翼も来るだろうと、腕時計に目を落としていると不意に影が出来た。
「柾輝?」
「・・・明美?」
「やっぱり柾輝だ!久しぶりね。誰かと待ち合わせ?・・・あ!もしかしてデート?」
「違うって。明美こそどうしたんだよ」
「私も友達と待ち合わせ、なんだけどまだ来てなくてさ」
柾輝が見えたから話しかけてみたの、と長い黒髪を揺らして明美が笑う。
笑った顔は昔と全然変わってなくてすごく懐かしく思えた。
明美と俺は数ヶ月前まで付き合っていた。
別れた原因は明美の『私たち終わりにしない?』の一言。
明美は理由が何なのか言わなかった。
俺も、困ったように笑う明美を見ていると何だか聞けなくて、結局聞きそびれてしまった。
「柾輝・・・ごめんね?」
「え・・・?」
いきなり謝られたのでうまく言葉が出てこない。
驚いて明美を見るとあの時と同じ、少し困ったような笑顔をしていた。
「私、何も言ってなかったでしょ?本当にごめんなさい」
「・・・別れた事か?」
明美がコクリと頷く。
どう答えていいかわからず黙っていると、明美が再び口を開いた。
「柾輝、好きな子いるでしょ?」
「は?」
脈絡のない話の展開に俺は一言、いや一文字返すのが精一杯だった。
「私と付き合ってた頃からずっと。好きだって、気づいてる?」
ふいに、あいつの顔が浮かぶ。
「・・・あぁ」
「そう、よかった」
あぁそうか。
明美が別れようって言ったのは俺が原因だったんだ。
「ごめんね、いきなりこんな話しちゃって」
「いや、こっちこそごめん。・・・ありがとな」
俺が少し笑うと、明美もニコリと微笑んだ。
明美によると、俺はかなり分かりやすい態度をしていたらしい。
と言っても、俺は好きだって自覚なかったんだけど。
その後、一言二言どうでもいいような話をしていると明美の携帯がメールの受信を告げた。
またな、と明美を見送ると、ふと翼の姿が目に入った。
翼、と手を軽く上げ駆け寄る。
「ごめん。待った?」
「いや大丈夫。どこ行く?」
「僕、映画見たいな。この間みんなで話してたやつ」
「じゃあそれ見に行くか」
二人並んで歩き出す。
自分より頭一つくらい低い位置を見下ろしながら、俺はさっきの明美との会話を思い出した。
『柾輝、好きな子いるでしょ?』
いきなり俺の前に現れて。
いつの間にか目が離せなくなってた。
惹かれてる事にすら気づいてなくて。
自覚したときには追い出せないくらいしっかりと俺の中にいた。
なぁ、翼。
お前は俺のこと、どう思ってる?
なぁ、翼。
俺はお前が好きなんだ。
FIN → 翼ver
Web拍手お礼小説第2弾 柾輝ver。
(2007・11・24)