その瞬間、俺の目に見えたのは、
俺の目の前にいたのは、
アカイユニホームを着て、不敵に笑う君だった。
赤と朱
バトルロワイヤルが始まって2日目。
アイツの名前はまだ呼ばれていない。
だが、無事でいるとも限らないのがこのゲーム。
「こんなことなら待ち合わせしとくんだったかな」
そんなことをぼやきながら、地図で今いる位置を確認する。
その時、不意に背後から足音が聞こえた。
手にしっかりと支給武器であるワルサーPPKを握り締め、
茂みから、音のする方をじっと見る。
ワルサーPPKを持つ手には、じんわりと汗が滲んできた。
少しすると、草の向こうに人影が見えてきた。
小柄でちょっと癖のある赤茶色の髪。
それは紛れなく、俺が捜していた人物だった。
「翼!!」
急に名前を呼ばれて、翼は一瞬、ビクッと体を震わせた。
しかし、俺を確認すると、すぐに安堵の笑みを浮かべた。
「マサキ・・・・。まだ生きてたんだね・・・・」
「翼こそ、無事でよかった」
ワルサーPPKをベルトに戻し、ギュッと翼を抱きしめる。
翼もそれに答えるように、そっと俺の服を掴んだ。
どのくらいこうしていただろうか。
俺の胸に顔を埋めたまま、翼から話を切り出した。
「マサキ・・・・僕はこんなところで死にたくない」
翼の気持ちは痛いほどわかる。
俺だって、いや、誰もまだ死にたいなんて思ってない。
「まだ、サッカーを続けたいんだ。だから・・・・」
ザシュッと歯切れの良い音がして、急に腹部に鋭い痛みが走る。
「だから・・・・マサキ、死んでくれない?」
翼が、俺の腹に刺さったナイフを引き抜く。
血が勢いよくあふれてきて、
翼の顔に、翼の服に、アカクアカク飛び散った。
その瞬間、俺の目に見えたのは、
飛葉中の赤いユニホームを着て、不敵に笑う君だった。
――――― 世界? ―――――
「ごめんね?マサキのこと、本気で好きだったよ」
――――― そう!都大会なんて小さいんだよ ―――――
「でも、やっぱりサッカーも大好きなんだ」
――――― 「僕は世界に行きたい」 ―――――
――――― もちろん、付いてきてくれるよね? ―――――
「マサキなら、わかってくれるよね?」
目指すのは世界。
それは今も変わらない。
けれど―――――
その瞬間、俺の目の前にいたのは、
血で染まった朱いユニホームを着て、不敵に笑う君だった。
FIN
二人でならきっと、世界に行けると思ってたのに・・・。
(2004・11・23)