黄昏と共に 

 

 

 

確かに彼は小さくて、ひどく華奢で、それなのに一番強くて、それでいて図々しくて、


でも、努力してもがいてボールを追いかける姿は美しかった。



今では世界進出までしちゃってたいそうスペインのチームメイトは彼の扱いに頭を抱えていることだろう。
自分たちとは雲泥の差、手の届かない人物となっているはずが、今、一回りも二回りも大きくなった(といっても俺のほうがでかい)背中を携えて目の前にいる。
でかくなっても変わらない大きくて長いまつげを持った瞳は、10年前と変わらずこいつのほうが小さいくせに上から視線をよこしてくる。
(小さいくせに)でかい態度もそのまんま。

「相変わらず、小さいな。」

そういってからかってやると、10年前なら容赦なく蹴りが入ったものだがさすがに大人になったらしい。

「ばっ・・・!少なくともお前よりは大物だよバカ。」

なつかしい飛葉中のグラウンドに影二つ。夕方ということもあり、影は大きく伸びている。

片付け忘れたサッカーボールを見つけ久しぶりに彼の元へ蹴り飛ばしてみた。
彼はうまくうけとめて蹴り返す。
積もる話もある。ボールを蹴りながら他愛のない話をした。
向こうでの武勇伝(笑)、中学のときの話、東京選抜、他の奴の近況、・・・

「まぁ、でもずいぶん楽しそうにやってんじゃねぇか。」

「楽しいよ。ひろいせかいは。でも」

背面で蹴り返したボールが地面に落ちる音がした。てん、てん、てん、と。
なぜ彼が取り落とすのかと疑問を持ったときに不意に背中に重さを感じた。

「たのしいよ、すごくたのしい。でも、」

その重さの中心から声が聞こえる。その声はいつもと変わらなかったけど、どこか頼りなく聞こえた。

重さが消える。振り返ってみると笑みを浮かべているのは確かだが、憂いを帯びた表情でこちらを見る彼がいた。

「でも、お前がいない」


多忙を極める彼だ。きっともうすぐ向こうへ戻らなければならないだろう。
この僅かな時間だけでも、俺にとどめておきたくて、目の前の大きいのに小さな彼を抱きしめた。

永遠なんてものはないのだからそんな言葉なければいいのに。
この時間の永遠がほしいと心から願った。

 

 

 

 FIN 

 

 


うちのブログが10万HITを迎えたお祝いにと、はちし様より素敵な柾翼小説をいただきました!
まさかこんな素敵サプライズをご用意していただけるなんて夢にも思ってなかったので、
嬉しさと感動、そしてはちし様への愛が一気に溢れだしました

はちし様、本当に本当に愛してます(*´▽`*)
・・・あぁ、いつもゲフゲフ言ってたのに、ついに言いきってしまった(笑)

内容の方は、こんなに想い合ってるのに一緒にいられない二人がすごく切なくて。
でも、そんな二人がまたすごく素敵で、本当にキュンキュンさせていただきました!
少し弱気な翼は何だか儚く見えるというか、本当に可愛くて仕方ないです(*´▽`*)
普段あれだけ強気な分、そのギャップがまたたまりません!
そんな翼を抱きしめて、永遠が欲しいと願う柾輝がまた切ないんだけどカッコいい!
出来ないと分かってても、いっそそのまま翼を連れ去ってくれと願わずにはいられません。

あと、10年後の二人はやっぱり大人っぽくなってるんだけど、全然変わってないというか、
大切な所はそのままな所がすごく素敵です!
何年経ってもこんな風にからかいあったり出来る相手がいるって素晴らしいですね♪
あぁ、やっぱ柾翼大好きだ(*´▽`*)

はちし様、素敵な小説&お祝い、本当にありがとうございました!

 

 

ばっく