※ コミック発売前につき、ネタばれ注意 ※
※ 第182夜〜第186夜を読んだ妄想です ※

 

 ゼロ 

 

 

 

「僕を殺してくれますか?」

 

 

ベッドの中でまどろみながら、ポツリと呟いてみた。

隣で閉じられていた漆黒の瞳が僕を捉える。
言葉はなくとも、相手が不信感を持っている事が伝わってくる。

僕は少し笑って、もう一度その言葉を紡ぎ出す。

 

 

「神田は、僕を殺してくれますか?」

 

 

ヘラヘラ笑いながら言うセリフじゃねぇだろ。

そう思いながらも、俺の口は固く閉ざされたままだった。
顔は笑っているが、瞳が笑っていない。

脳裏に、例の孤児院での事が鮮明に蘇ってくる。

自分のイノセンスの力に苦しむエクソシスト。
あの時、俺と目があったのは・・・。

 

 

「14番目はお前が止めるんじゃなかったのか?」

 

 

否定とも肯定とも取れない返答。
彼も迷ってくれてるんだろうか。

邪魔なものは切り捨てる、なんて言ってたのはどこの誰だっただろう。
言葉の裏に隠されているのは、ほんの少しの優しさ。

今度は自然と笑みが零れた。

 

 

「止めてみせますよ。・・・でも・・・」

 

 

音が途切れ、目の前の笑顔が俺の胸に隠れる。
触れた場所から伝わってくるのは、暖かな体温。

そして、僅かな震え。

感じているのは恐らく恐怖。
自分を取り囲む闇に、コイツはどんどん溺れていく。

逃げたいのに逃げ出せない。
どうすればいいのか分からない。

初めて、自分とコイツは似ているのだと思った。

 

 

「ならお前は・・・俺を殺してくれるのか?」

 

 

予想外の言葉に、反射的に顔を上へと向ける。
しかし、表情からは何を考えているのか読み取れない。

・・・彼の瞳が揺れた気がしたのは、僕の見間違いだろうか。
死ねない、なんて言ってたはずの彼が死を望むなんて。

思い出すのは彼の兄弟子が呟いていた言葉。
彼もまた、闇の中にいるという・・・。

彼が本当に求めるものは生?
それとも死?

僕と彼は、どこか似ている。

 

 

「人のセリフ、真似しないでください」

「真似されたくねぇなら言うな」

 

 

また余計な事を言い出す前に、相手の唇を自分のそれで塞ぐ。

 

 

答えなんてあるわけがない。

 

 

僕たちは、ただひたすら、互いの存在を確かめるように体を重ねた。

 

 

 

 

自分の中に、自分じゃない誰かがいるのが分かる。

日に日に自分が蝕まれていく。

僕の中の誰かが目覚めようとしている。

僕は一体いつまで僕でいられるだろうか・・・。

最初は一つだった花が、今では数えきれない程になった。

命を対価に咲き誇る無数の蓮。

消える事のない幻の花。

俺はいつまでこの花に囚われずにいられるだろうか・・・。

 

 

 

 

全てをゼロに戻せたのなら、どんなに楽だろう。

 

 

 

 

壊れていく。

 

 

アナタは私を殺してくれますか?

 

 

 

 FIN 

 


182夜〜186夜まで読んで突発的に書きたくなった文。
ダークですみません。

零(ホラーゲーム)とそのテーマソングを参考にさせていただいてます。
歌詞や零に出てきた文章が何とも神アレチックだったもので。

(2009・4・24)

 

 

ばっく